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LingrとRejawサービス終了のお知らせ:Kenn's Clairvoyance - CNET Japan
しかし一方で思うのは、4人というのはやはり大所帯だったということです。アーキテクト・デザイナ・クライアントという専門には重複がなく、これにアーキテクチャとデザインの両方を見られるマネージャであるぼくを加えて4名なら、適正な少数精鋭と言えると思っていました。しかし、これは決して「少数」ではなかったのです。
4人のチーム・プレーすら、多いのか。
ほんとに、チームワークがないな。
そして、人数が多くなると「スピード」の遅さに直結します。専門分野の違う優秀な人たちが協力して作り上げることで確かにクオリティは高くなるのですが、開発時の意見のぶつかり合いによるストレスは格段に増え、あるいは専門による分業を明確にして衝突を避けようとするとその隙間でとんでもない見落としがあったりして、どうしてもスピードが落ちます。それぞれ個人としていかに優秀であっても、その能力が存分に活かせなくなってしまうのです。その結果、3年間で2製品。変化の早いウェブの世界のものさしで測ると、これは泥亀のようなスピードだったことに気づかされます。
スピード スピード
事業を経営する立場から見ると、人件費というのはたった一人でもいればかかるものです。そのたった一人分の人件費と比べて、チープ革命やクラウド化によってインフラのコストはどんどん安くなっていく。
たとえば仮に、サーバ運用のためデータセンターにかかるコストが年間100万円というと、事業コストとして経営者の目から見ると全然たいした金額ではありません。社員が数名いれば、相対的には無視できるぐらいの金額と言えるでしょう。
しかし、これが年間10万円、あるいは1万円ならどうか。もはや個人のポケットマネーでも躊躇せずに支払える水準になってくるでしょう。
数名以上の規模の事業として考える場合、事業の主軸であるインフラへの投資が年間100万円というのはすでに安いので、これをさらに切り詰めて50万円にしようとか、そういうことに努力を傾けるのは合理的に考えて無駄ですから、そういうインセンティブは働きませんし、実際に無意味でしょう。
しかし、もし同じことが実は年間10万円で可能なら、そしてそれを個人でやるとしたらどうでしょうか。かたや人を抱えて1千万円の桁の投資をし、かたや10万円で細々とサービスをやっている、というわけです。人を抱えているか、いないかの違いで、桁が二つ違ってくるわけです。
もちろん、人件費がかかっていないということは、本人はどこか別のところで生計を立てられるだけの収入を得るため別の仕事をしているということであり、フルタイムで打ち込めない分、不利な面があるのは確かでしょう。しかし、プログラマーはやる気と集中力次第で生産性が(誇張ではなく)100倍ぐらい上下しますから、本当に心から面白いと思っているプロジェクトであれば、それは必ずしも大きな壁にはならないでしょう。そして、実際にユーザが増えてあっぷあっぷの状況になってきたら、それはとても健全で自然な「事業化のサイン」といえるのではないでしょうか。
以下、とても具体的なケースが書かれているので、とても有益だと思う。
もっと具体的な例では、うちの場合ではLingrとRejawを合わせて計30台ぐらいサーバがあり、フルラック2つで年間計350万円ぐらいかかっています。しかし、上述の人件費に照らしてみれば、大した金額ではないのがおわかりいただけるでしょう。Lingrの場合、データベースのレコード数にしてだいたい7,000万件ぐらいの発言データが蓄積されていますが、以前サービスの負荷が妙に高かったときに急いでマシンを増やして対処したところ、その後にアーキテクチャの見直しで劇的に負荷が下がり、今ではデータベース以外の負荷はスカスカです。つまり、この程度の規模のサービスなら、データベースや各種サーバをちゃんとチューニングするノウハウがある今なら、Amazon EC2などをうまく使って年間10万とはいわないまでも、100万をだいぶ切る構成で運用が可能かも知れないという感触があります。ただ、それをとことん追求するインセンティブがなかったということです。
このことに関して、Dan Kogaiさんのエントリーがまた面白い。
こういうところが、RSS Readerによって、日々の情報発信を共有しているBlog Sphereの面白いところ。
やはり、ひとつのトピックに関して、さまざまな立場の人が何かを語るのは、それだけで意義のあることがある。
404 Blog Not Found:たった一つの冴えたやり方@IT - lingr to stop lingering
IT業界でうまく行った事例を、ここで改めて思いおこしてみる。
mixiはかつて株式会社イー・マーキュリーの片手間事業で、中核事業は求人情報サイトFind Job !だった。greeも似たようないきさつで今に至っている。
ニコニコ動画が自前で動画をホスティングするようになったのは、YouTubeにアクセス禁止を食らってから
Twitterでかつて一番よく目にしたのは、つぶやきではなくサービス停止中を示すネコの写真(今はトリの絵)。
必要になる前に手を打つのではなく、必要になってから速攻で縄をなう。ヒトもカネも、そして会社というヴィークルさえも、必要になってから調達する。これが、どうやらIT界の成功法則のようである。
これはある意味、熟練度が高い人ほど、そして誠実な人であればあるほど、不快で不愉快な設定である。熟練度が高ければ高いほど、「それをやるのに何が必要なのか」がよくわかるようになり、そして誠実であればあるほど「必要なものがない」状況を許しがたく感じるのだから当然といえば当然である。kennがはまった罠は、まさにこれだったのではないか。
敗軍の将の言葉のほうが、重いことがある。
以下の述懐は、ITシリコン・バレーに対する、レクイエムになっているのかもしれない。
Googleや、Amazonがあまりにも、おもしろかったからこそ、シリコン・バレーにこだわらなくても、IT起業が簡単にできるようになってしまったということで。
この分野では「企業の競争相手が個人になる時代は目の前まで来ている」ということです。スタートアップ企業を作って数名で作るのと、一人の個人が副業で立ち上げるのとでは、最終的に出てくるモノの差がだんだんなくなってきており、単に「かかるコストだけが100倍違う」ということになりかねない、と思うのです。
さらには、個人で開発するということは、意志決定の速さが格段に違ってきます。たとえば作っている最中で何かが根本的に間違ってるのでプロジェクトを中止したほうがいいと思っても、チームでやっていると中々言い出せず、ずるずる引きずって時間を浪費してしまうというようなことがあると思います。しかし、10発撃って1発当たるかどうかという世界で勝負していくには、そういう「見切り」の速さこそが命ではないでしょうか。
以下 Dan Kogaiさん。
小さすぎて企業が収まらない水たまりも、個人であれば立派なブルーオーシャン。大きな海だけ見るとまっかっかに見えるけど、こういう水たまりはまだいくらでもある。そしてそれはITに限ったことではない。
泥棒、いや運命の女神がいたら、その場で捕まえよう。縄とかプレゼントとかは、後回しで構わないのだから。
Long Tailってことになるわけですか。