英語達人塾 極めるための独習法指南 (中公新書)

英語達人塾 極めるための独習法指南 (中公新書)


英語の学習方法をかなり広い範囲に渡って、まとめた著作を読みました。
筆者は、東大の英語の先生。
M&Dという英語の富士山を踏破するために、色々な方面の専門家の力を借りて行くつもりで
読書してみましょう。そして作文の書き初めのつもりでこのエントリーを起こします。

本書の多読のコーナーで推薦されている本にkazuo Ishiguroの書物があったので
その映画作品を動画で抜粋。Remains of the day

教育とエンターテインメントは、仲良くなることが出来るかどうかというのは
とても古くさいテーマなのですが、その古典的なテーマに迫るある意味とってもクラシカルな
本になっています。
動画などを通じて、英語に挫折する人のよくあるケースとして、
どうも文法の学習でいやになってしまう人が多いと。
そこで転ばれたら、たしかに先に進もうにも進めない。
そういう人たちがたくさんいるので、だったら、単語がいくつかしかのっていない
「絵本」を英語でどんどん読んで行けば、英文法の勉強を経由しないで
一気に英語の力がつくはずだという人たちの流れも登場する。
最近、私はこの流れを意識して、英語教育の末席にいるつもりなのですが、どうも
これも、実際の生徒さんの学力の様子をみると、あやしい。
だったら、英短文を暗記させようと思うのだが、それもなかなか目に見える成果が
あるのかどうかは、すこし怪しい。
辞書の活用をどうするかというのは、つまり単語力をどうやって養成するのかということだけど、
これも、あまり王道らしいものはなさそうだね。
英単語のノートを作ろうとか、とにかくよくひこうとか。いろいろな教えがあるのですが、
そもそも本当に英語が嫌いな生徒さんは、辞書と友好関係を締結することに二の足を踏んでいる。
そこへ、いくら「辞書と友達になりなさい。」といったところで、文字通り、「効果のない念仏」に
なるでしょう。
個人的な経験によると、中学英語の教科書の本文に該当するところをしっかりと
暗記していると、学校の定期テストの得点などものびて、苦手意識が解消したような気がするのです。
これも、やってみたけど、目の前にいる生徒に確実に実行させようとするためのエネルギーと
自分が、どんどん色々なテキストを暗唱するために必要なエネルギーは質も量も異なるような
気がします。
筆者は、おそらく学習者としては、学部生、院生を想定しています。
それなりのレベルの英語力がすでに整っている上で、さらなるレベルアップをめざそうというのが
本書の狙いなのかなと。そんな気がします。


目次
第1章 入塾心得
いわゆるコミュニケーション能力重視の英語教育。「話ができることが大事」
この系統に属する英語教育の流れに対する異議申し立て。
「会話力」大事にする先生の系譜もある程度、見て来ているので、本書の筆者の
ように、受験英語的な鍛錬バリバリというところにはまだ全面的には賛成できない。

第2章 音読
これも、生徒さんにやらせますけど、果たして、授業時間から外れたところでどれだけ
実践されているのかは、疑問です。

第3章 素読
意味がわかっても、わからなくてもいいから、とにかく「読め!」

もとより寺子屋に通う子供たちが最初から「論語」などを読み解けるはずもない。ただ何度も何度も漢文を読んでいるうちにそのリズムを身につけ、やがて内容を少しずつ理解していくこになる。

第4章 文法解析 齋藤秀三郎
41ページ

とくに注目すべき著作としては、品詞に即て英文法を解説した「実用英文典」がある。齋藤の死後に出版された1064ページもの分厚い合本がいま手元にあるが、その質の高さに驚くばかりである。母語話者でも知らないと思われる文法事項が詳述されており、普通の学者ではこれをまとめるだけでも生涯の大仕事だろう。齋藤は、この大著によって日本における学校英文法の基礎を築いたと言われている。

この「実用英文典」現在、アマゾンにて数万円という値段がついている古書となっています。

第5章 辞書活用法
「研究社新英和大辞典」について

2002年の3月、僕にとって特別な意味を持っている辞書の新盤が出た。「研究社新英和大辞典」第6版である。初犯は1927年(昭和2)に出版された。当時の編集主幹は岡倉由三郎だが、補佐を務めていたのはほかならぬ英語辞書の偉人・岩崎民平(下段参照)である。「岡倉英和」と呼ばれたこの辞書について、英文学者・福原麟太郎は、恩師の岡倉のことには触れず、岩崎が中心となってまとめたので信用できると書いた。辞書編纂者として絶大な信頼を得ていた岩崎は、その後、第3版と第4版の編集主幹を務めた。

M&Dを翻訳した人のあとがきをみていると、結構いろいろな種類の辞書を参照しながら日本語に
置き換えて行った形跡を推測させます。
そういうわけで、英語の学習ということで文献を読んでいるときも、「辞書」についての言及。
お勧めの辞書のリストについても知りたい。辞書の編纂をしている人のことが知りたい。
そういう観点から、みています。この前のエントリーもそういう観点が重心をもっていました。
やはり、「研究社」できまりのようです。
多読という形である程度、まとまった量の英文を読んでいると、たしかに、
辞書というものがもっている重みが違って来る。多読して初めて、そういう心境になったような
気がする。特に、M&Dレベルになると、辞書が解答を出してくれないということもある。
こういう限界領域のほうが、いろいろな問題意識を生むのではないかと思いました。
M&Dの帯をみたら、翻訳に10年かかったと書いてあったけど、あれは本当なのだろうかと。
いまでも思う。

第6章 暗唱

卓越した英語力を駆使して駐米大使、外務大臣、さらに内閣総理大臣の重責をこなした幣原喜重郎は若い頃イギリスで師事した英語の先生に暗唱を仕込まれていた。幣原は、先生が命じるままに毎日3、4ページの英文を覚え、先生の前で暗唱・復習をしたという。

デイビッド・ロッジという元英文学教授、小説家をお勧めしていた。
こういってところは、好みなんだろうなと思います。
外務省と英語というのも、一つの大事なリンクだなと。
日本政府が、外国の政府と関係を持つときのエージェント。
話が大きくなるけど、そもそも日本人がどうして英語の勉強に迫られるのかという根源的な
問題設定をしたら、おそらくそれは、「ペリー来航」にまで起源がたどれるだろうから。
大事なことは、投票できめようというのが、民主制のルールですが、
その国にとってのっぴきならない重大事が、いつだって国の中から内発的におこるとは限らない。
多くの人が、関心をもたないようなところで、列島全体に関わる大きな問題が生起することだって
ある。そうすると、ある程度、民主制の外枠で、その問題に対処する必要だってあったと思います。
「外国語屋」の職分というのはどうもそういうところにあったのかなと。
ビジネスで、大事なのは、「お客をつかむこと。」ということですが、
これを、広く、どういう人と関係をもっていくのかという問題意識に置き換えると、
「外国人」というのは一つの選択肢でしょう。
違う世界の人と、交流をもつことで、得られることというのは、時に、本人の想像の枠外に
なるだろうから。いい意味でも悪い意味でも。
この幣原という人は、戦前、どちらかというと、アメリカと仲良くして、日本の進路を
守って行こうという路線をとっていたらしい。
吉田茂は、彼が外務大臣だったときの次官だそうです。
外務省出身で有力な政治家になっている人というのは、最近は誰なんだろう。
どうもこの幣原という人をみると、戦前のほうが、外国とどういう関係をもつのかという
ことが、切実な意識をもって、政界が動いていたのかなと。
政治の世界で、どういうスキルをもった人が上昇していったのかどいうのは、
そのとき、そのときの国の実情や、差し迫った問題がどういうものだったのかを知る上で
結構大事かもしれない。
もっとも、外国とほど遠いところで、英語教育をしている立場としては、なんとも
虚しい、空理空論ですが。

第7章 多読
Readingの試験があります。設問は2つ。
長文の内容はいわないほうがいいのかな。それにしても設問がすくない。これで、読解力を把握される
ことにすこし納得がいかない。
最近、一番、元気がよくなってきているのは、この学習分野なのかなと。
外国の書物へのアクセス。外国語で書かれた論文へのアクセスをどうやって下げて行くのか。
「もの」へのアクセスにかかるコストは限界まで引き下げられていると思います。
Kindleの登場で一目瞭然でしょうと。
そう。ここでも重要になってくるのは、さしあたって、特効薬など存在しない
「読み手」の数なのだろうなと。英語の絵本やら、ペーパバックやら「自炊本」のデータを
みていて、感慨があります。
「抱負」には入れませんでしたけど、今年もできるだけ色々なジャンルの英語本に触れるように
したい。翻訳本をどう活用するのか。日本人が書いた本のフォローをどうやってするのか。
色々な問題がありますけど。引き続き、英語と仲良くやっていきたい。


第8章 丸暗記

暗記と暗唱とはだいぶ目的を事にしている。暗唱が音読・素読の延長として、いい文章の調子を身体に刻み込むためのものである。必然的に、暗唱同様、同じものを何度も繰り返して読むことになるが、こちらは文法の解説文まで音読する必要はなく、また一言一句原文通りに覚える必要もない。あくまで、性格な情報が脳に練り込まれさえすればよいのである。

第9章 作文

文学的創作は、母語であっても難しい。ましてや外国語で文学作品が作り出せるようなら、すでにその外国語は完全に習得したと考えていいだろう。

英語の作法

英語の作法


この本には、英語で小説を書くノウハウが書かれているそうな。

第10章 視聴覚教材活用法
第11章 その他の独習法
第12章 英語教材の選び方