センター試験対策の戦略論

【センター試験2013】“今”やるべきこと・できること|吉永賢一IS東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法と記憶のコツ
1月19日〜20日の大学入試センター試験実施まで40日を切り、受験勉強も追い込みの時期に入った。志望校合格に1歩でも近づくために、受験生が“今”できること、“今”やるべきことは何なのか? 東大をはじめとした難関大学や医学部受験生を1,000人以上指導した実績と、東大家庭教師シリーズなどの著書をもつ吉永賢一氏に聞いた。

−−センター試験で1点でも点数をあげるために、試験までおよそ1か月となった今やるべきことは何ですか?

 今やるべきことは、各自の段階に応じて3種類あります。

・(1)センターに必要な知識体系の理解・暗記+センター型の演習(分野別の形式)
・(2)センター型の演習(年度別の形式)
・(3)まだ覚えていない暗記事項の暗記

 これは、下へ行くほど、達成度の高い人向きの方法になります。現在、(1)の段階にいる人は、なるべくセンター試験当日までに、(3)の段階にまで進むようにしてください。

−−具体的に、どういった勉強を行えばよいのでしょうか?

(1)センターに必要な知識体系の理解・暗記+センター型の演習(分野別の形式)

 これは、年度別形式のセンター演習を行おうとしても、わからないことばかりで、「これでは、演習にならない」と感じる人のためのものです。

 目安としては、年度別の形式で、50%以下の得点になる科目です。教材としては、書店で入手する場合、直前対策用として出版されている本で、下記のような教材を準備してください。

・体系的な説明があるもの
・センターレベルを意識しているもの(レベルが高すぎないもの)

 そして、分野別に理解・暗記を行い、その範囲におけるセンター形式の演習を行います。これを、分野ごとに行って、科目全体の分野を終えたら、(2)の段階に進んでください。

 現在では、「必要な知識体系の理解・暗記用」の内容と、「その分野のセンター型の演習」が1冊でできる本も、いろいろと出版されています。

 ただ、その種の本では演習問題が少なすぎる場合もありますので、そう感じる場合は、分野別になっているセンター型の問題集で、問題の演習量を増やしてください。

(2)センター型の演習(年度別の形式)

 50%以上取れるようになった科目は、この段階になります。この段階では、間違えた問題を、どう復習するかが重要になります。おすすめの方法は、1年分ずつ解いていくということです。

 自己採点を終えたあとで、次の2つに分類してください。

・本番においても、できるようにならなくて良い問題
・本番では、得点したい問題

 この判別は、各自の目標得点や、その科目の得意不得意によって変わってきます。そして、得点したい問題の復習については、次の点を意識してください。

・この問題を解けるようになるには、何を理解したら良いか?
・この問題を解けるようになるには、何を覚えていたら良いか?

 そして、「理解」については、その「理解」が、どのような体系に位置するかを考えます。そして、間違えた部分だけではなく、その体系の前後の部分についても、理解度を確認し、薄いところがあれば理解を強化します。

 「覚えるべきこと」については、「どうやったら、試験場まで覚えていられるか?」を考えます。この際、一番大事なことは、「覚え方」をもつことです。これは、語呂合わせでも、繰り返しの復習でも、方法は何でもよいのですが、「試験場において、覚えていられるためのプラン」をもってください。

 そのような「覚え方」をもたずに、次の問題に進んでいくならば、「覚えなきゃ」と意識するだけで終わってしまいます。「覚えなきゃ」と意識するだけで、実際に覚えない場合は、焦りの気持ちが増すだけで、知識は増えないことになるわけです。

 「覚え方」では、ヘタな方法でも構いません。問題なのは、「覚え方をもたない」ことです。ヘタな方法でも何でもいいから、とにかく「覚え方」を作る習慣をつけます。

 また、以前に覚え方を作っておいたけれども、それを忘れていて、間違えることもあると思います。その場合には、その覚え方を復習し、覚え直すようにします。あるいは、その覚え方の出来があまりにも悪いと思われるならば、覚え方を作り直します。

 いずれにせよ、必要があれば、暗記チェック用の教材を自作します(カード、ノート等)。そして、その教材については、これからどのようにして復習していくかの計画も立ててください。

 そして、間違えた部分だけではなく、その知識を含む「覚え方」全体を確認するようにします。

 たとえば、イオン化傾向を語呂合わせで覚えているとします。その場合、もし「鉄」の場所を間違えたとしても、「鉄」がイオン化傾向で、どこに位置するかを確認するだけではなくて、その「覚え方」の全体を復習する方がよいのです。また、イオン化傾向について、覚えておくべき必須知識についても、その問題では問われていなくても、確認しておきます。

 なぜこういうことをするかというと、忘れていた知識の付近には、穴があることが多いからです。このような復習をすることで、ただ解説をざっと読んで終わらせている人とは、伸びのペースにおいて、大きく差をつけることができます。

 次の年度の問題を演習する前に、この「理解」と「暗記」を終わらせてください。どんどん解いてしまうのではなく、1年分ごとに、不足している理解や暗記事項を抽出し、そこを補うようにします。次の年度の問題を演習する際には、それまでに間違えた問題の類題が出ている場合、そこで得点できるように、特に意識します。

 10年分以上演習しても、得点が80%を超えない場合、「ここまで間違えた箇所について、関連する情報を理解したり、覚えたりしてきているか?」をチェックしてください。もちろん、理解すべきことの理解を飛ばしていたり、覚えるべきことを覚えずに、「ただ採点しただけ」の箇所を発見したら、復習し直します。

 これが終わったら、下記のどちらにするかを判断し、実行してください。

・さらに年度別の問題を収集して、年度別の形式の演習を続ける
・いったん、1の段階に戻って、再度知識を固め直す

(3)まだ覚えていない暗記事項の暗記

 80%を超えるようになった科目は、この段階です。教材としては、(1)と同じようなものを使うこともできます。その場合、まずは通読して、「(新たに)覚えるべきこと」にはマークしたり、書き出したりして「抽出」します。

 そして、「抽出」した箇所だけを繰り返して覚えるようにします。本全体を繰り返すと、時間がかかりすぎるからです。教材として、(2)と同じものを使うこともできます。その場合、どんどん解いていきます。そして、間違えた問題を抽出し、不足している理解事項と暗記事項を明確にします。

 メインは、暗記事項の不足の発見になると思いますが、もちろん、理解事項の不足が発見されたら、「本番前に発見されて、良かった!」と喜びながらまとめます。

 これらをある程度行うと、「理解すべきこと」「暗記すべきこと」がまとまるので、あとは、特にセンター型の演習を行わなくても、「この知識を繰り返しておけば大丈夫」という感覚が得られるはずです。

 なお、このとき、「もっとセンター型の演習をやっておいた方が良い」と感じられる場合は、さらにセンター型の演習を続けてください。