高校数学でわかるボルツマンの原理―熱力学と統計力学を理解しよう (ブルーバックス)

高校数学でわかるボルツマンの原理―熱力学と統計力学を理解しよう (ブルーバックス)


再びフーリエ変換です。 - book-loverの日記

上記エントリーで取り上げた筆者の「熱力学・統計力学」のイントロダクション書籍。
「高校数学」と書いてあります。

偏微分方程式・全微分はやはり登場しています。
(もちろん、解説がすこしあります。がしかし、わかりにくいのではないかと思います。)

通読2回。
1回目は、ペンも紙もなしで、目を通しただけなので、途中崩壊状態で、
「多分、こんなことが書いてあるのかな」と「想像」しながら読み終える。

あ、気がついたら終わっていたみたいな。

いつものことですが、番号をふった数式だけ集めて、「別冊」の付録を作ったほうが、
「通読」のスピードを速めると思う。
いつか、書籍のコピーをして、そういうのを作ってみたら面白いのではないかと思った。

式展開の解説はかなり丁寧な部類に入ると思います。
114p
153P  スターリングの公式の証明がちょっとわかりづらかったかな。
167P
178P
202P  5-12の式をどうやって、適用しているのかが、いまひとつ納得できなかった。式をガチャガチャと
    変形して、代入を試みるも、うまくいかない。

実験・実験にあたる「事象」を丁寧に説明する。

結果を詳述する。

結果を説明する数式モデルの導出

得られた数式モデルを、またさらに別の数式モデルの導出に援用していく。

という理系的な流れにそった本のつくりで、熱力学と統計力学のカンドコロを攻略していきます。

気球が空を飛ぶメカニズム。
飛行機が墜落する原因となるメカニズム。
酸素欠乏症のメカニズム。
レーザーのメカニズム。

「おお」とうなるような事象について、導出した数式モデルで、スパスパと解説が加わっていきます。
富士山の頂上、エベレストの頂上、上空10000メートル、それぞれでの気圧の計算とか、
読んでいて感動。

ところどころに、元サラリーマン戦士であった片鱗がうかがわれます。

そうそう。いまトヨタ自動車のリコールが話題になっていますけど、「カルノーサイクル」という
「理想」的なエンジンの仕組みの解説も丁寧に書いてあって、よいよ。
日本経済新聞

トヨタ自動車豊田章男社長は19日午前、名古屋市内で記者団に対し、一連のリコール(回収・無償修理)問題を巡り、米議会下院の監視・政府改革委員会から招致された公聴会に出席する意向を自ら表明し、「誠心誠意説明したい。原因究明に協力し、顧客の安心と信頼回復に努めたい」と述べた。公聴会は24日に首都ワシントンで開かれる。

いままで、いまひとつ、納得できなかったけど、本書を読んで、ひざをついたような気がします。
「文学的」に秀逸だったのは、ここのくだりかな。

75P

ワットが蒸気機関を開発したとき(1770年代)、ボイル・シャルルの法則(1787年)はまだ見つかって
いませんでした。つまり、ワットたちは期待の性質をあまりよく理解していない状況で
蒸気機関を開発したことになります。このように動作原理となる部分の基本的な性質が十分にはわかっていない場合でも、試行錯誤を繰り返して、経験的にその性質を把握すれば、技術開発は可能なのです。科学が十分発達していると多くの人たちに考えられている現代においても、実は研究開発の現場では、この種の試行錯誤が繰り返されています。蒸気機関の改良には、多くの研究者や技術者がかかわり、進歩が、それは穏やかなものでした。改良のスピードが遅かった最大の理由は、「蒸気機関と熱の間の基本的な関係」が明らかではなかったことです。つまり、改良のための基本的な指針がわかっていませんでした。

たしか、NHKのニュースだったと思う。
大阪で、医師資格をもっているわけでもなさそうな人たちが、「民間療法」として、「ガンにきく」食事方法とかを、売りにしていたということがあったようで。
ある程度、「効く」ということで、厚生労働省がことの実態を把握するために研究会だか審議会だかを
立ち上げたとか、立ち上げないとか。
なんらかのブレークスルーというのは、必ず大学の中で起こるとは限らないと。
まあ、大学より「お金と人」を使えるのであれば、十分に可能なんだろうな。
だから、理工系の人たちは企業の中央研究所とかいくと。お金いいし。


95P

この「高温の熱源と低音の熱浴の温度差が大きいほど、効率のよい熱機関である。」ということは、熱機関を設計する際の重要な指導原理です。

目次

第1章 天を目指す人々

気球に魅せられた科学者たち
気球を浮かせるものは何か?
簡単なシャルルの法則の実験
気体をミクロの視点で考える 気体分子運動論
シャルルの法則を気体分子運動論で理解する。
ボイルの法則の気体分子運動論による理解
ボイルの法則の気体分子運動論による理解
ボイルの法則とシャルルの法則の結合
アボガドロ
1Molの気体 1Molの液体
窒素による酸欠事故
熱気球と水素気球の浮力比べ
気球競争のその後
高い空での気圧
パスカルとPa
ジェット旅客気の巡航高度
現代の気球の活躍

第2章 夢のエンジン

熱のやりとりとエンジン
ワットによる改良
熱機関
熱量とエネルギーの関係
熱力学の第一法則
気体の膨張による仕事
気体の内部エネルギーとは何か
ゲイリュサック・ジュールの自由膨張の実験
熱量と比熱
定積比熱と定圧比熱の関係
カルノー
東温過程
断熱過程
高い空での気温と断熱過程の意外な関係
カルノーサイクル
カルノーサイクルでした仕事
体積V A,B,C,Dの関係
カルノーサイクルの効率
様々なエンジンの効率
地球温暖化との戦い
可逆過程と不可逆過程
カルノーサイクルを逆回転したら?

第3章 エントロピーって何だ>

エントロピーの登場
エントロピーは増えたり減ったりする。
エントロピー増大の法則
熱は暑いところから冷たいところへ流れる
熱力学の第2法則は20面相
熱力学の番外法則
自由エネルギー
2つの系が接触したときの平衡状態の条件は?
総体積が一定の場合
化学ポテンシャル
大きな系の中に入った小さなけいの向かう方向とは?
自由エネルギー最小の原理
宇宙の熱的死

第4章 気体分子運動論 ミクロの世界で何が起こっているのか

エネルギー等分配の法則
期待の圧力
気体分子のエネルギー
ボルツマン定数
気体分子の平均のスピード
気体の比熱
固体の比熱
気体分子運動論の戦い
ブラウン運動
指数と対数

第5章 統計力学の世界へ

マクスウェル・ボルツマン分布
気体分子のエネルギー分布を考える
簡単のために数を減らして考えよう
もっともおこりやすい分布を探す
ラグランジュの未定乗数法
分配関数
気体分子のエネルギー分布
ベータの発明
気体分子の速度分布
マクスウェル ボルツマン分布の対象
マクスウェル・ボルツマン分布に従わない粒子
フェルミ粒子とボーズ粒子の奇妙な性質
フェルミ・ディラック分布の性質
フェルミ分布をニュートン力学的粒子でたとえると
ボース・アインシュタイン凝縮

第6章 ボルツマンの原理統計力学の中核へ

エベレストの3つの弾劾
中心極限定理
ミクロ化のに駆る分布

付録
P-V図でのエントロピー
クラウジウスの不等式

あとがき

参考文献 参考資料

さくいん

本書に掲載されていた参考文献

熱・統計力学 (物理入門コース 7)

熱・統計力学 (物理入門コース 7)


熱・統計力学入門 (新物理学ライブラリ)

熱・統計力学入門 (新物理学ライブラリ)


統計力学 (物理テキストシリーズ 10)

統計力学 (物理テキストシリーズ 10)


本書の筆者は中村先生という人に「統計力学」を教わったとテキストに書いてありました。