東京大学 大学院経済学研究科 金融システム専攻

ほしい情報が一覧できるようになっていなかったので、
講義科目に関する情報や、講義を担当する教員のプロフィールなど
をまとめてみました。

http://www.e.u-tokyo.ac.jp/finance-g/index.html

・資産運用と金融工学
・企業財務
・企業会計
の3つのサブ領域、「金融政策」は
・金融システム分析
・マクロ金融政策
の2つのサブ領域からなります。」

金融経済学Ⅰ 小林 孝雄

投資ならびに資産価格の理論を講義する。投資家の効用理論、最適消費・投資問題、資産市場の均衡モデル(CAPM、ICAPM、CCAPM、APT)が講義の中心となる。こうしたテーマに関する金融経済学の標準的な静学モデル、動学モデルをカバーした上で、投資家行動に関する行動科学的モデル、長期投資に関する最近の理論的発展、均衡モデルの最近の話題などについて、入門的な解説を行う。

小林 孝雄
ゼミ 資産運用 金融工学

東京大学工学部卒業。スタンフォード大学ビジネススクール博士課程卒業(Ph.D.)。ハーバード大学ビジネススクール研究専任助教授,東京大学経済学部助教授、同教授を経て,1996年東京大学大学院経済学研究科教授に就任,現在に至る。その間、カリフォルニア大学バークレー校の客員助教授、高麗大学の客員教授などを歴任。現在、アジア・ファイナンス学会理事、日本ファイナンス学会副会長、MPTフォーラム会長。

資産運用理論とフィナンシャル・エンジニアリングの分野では、投資信託や企業年金公的年金の運用環境の整備・運用技術の開発にかかわる研究を行っている。1例を挙げると、法人間の株式持ち合いや親会社・子会社の同時上場が市場にもたらす歪みを理論的に分析し,それを是正するための方策を業界に提示した。また、他社株転換社債や変額年金保険など新型金融商品の評価や、信用リスクを明示的に考慮した転換社債のプライシングモデルの開発などを行ってきた。現在、ファンドのパフォーマンス評価に関する新手法の開発を、高橋明彦助教授と共同で手がけている。また、いわゆるバリュー株効果が発生するメカニズムの解明も、強い興味を持つ研究テーマである。
 より大きな課題としては、株式市場の過熱やクラッシュなどの現象を、個々の投資家の行動原理の探求からではなく、多数の投資家のゲーム理論的な相乗作用の結果として解明すること(ミクロの動きの足し算では説明できないマクロ現象として説明すること)に興味を持っている。また、金融システムの作動特性や実物経済への効果を中心に、金融システム理論の体系化に取り組んでいる。


金融経済学 Ⅱ

「金融経済学Ⅰ」に続き、 不確実性下の連続時間における金融経済学の基礎事項を講義する。特に、裁定理論、最適消費・投資問題、資産市場の均衡モデル などの標準的な話題を講義する。

高橋明

小林 孝雄 教授・高橋 明彦 教授
資産運用 金融工学
資産運用・金融工学関連の論文を輪読する。

ゼミ 資産運用 金融工学
資産運用・金融工学関連の論文を輪読する。

東京大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレービジネススクール博士課程卒業(Ph.D.)。日本興業銀行、Long Term Capital Management、東京大学大学院数理科学研究科助教授を経て、2003年同大学大学院経済学研究科助教授、2007年4月同准教授、6月同教授に就任、現在に至る。

ファイナンスの分野で研究を行っている。特に、ファイナンス分野の数値的諸問題に対し、統計的漸近分布論及びマリアヴァン解析(無限次元確率解析)を基礎とした新手法の開発とその体系化に関する研究を進めている。また、モンテカルロフィルタなどフィルタリング技術を活用し金利の期間構造モデルの推定及び投資信託などの運用手法分析に関する新手法の開発も行っている。その他の研究としては、信用リスクを明示的に考慮した実用的な転換社債モデルの開発を行った。

C/C++を用いたファイナンスのための数値計算入門
デリバティブモデルの構築などファイナンスに必要な数値計算法をC/C++ を用いて講義する。
八木恭子
南山大学経営学部情報管理学科卒業。同大学院経営学研究科修士課程修了、同大学院数理情報研究科にて博士号(数理情報学)を取得。日本学術振興会特別研究員DC2を経て、2007年4月より現職。

数理ファイナンスとデリバティブ
デリバティブに関する理論的・数値的話題を数理的に講義する。

株式ポートフォリオ分析
この講義ではファイナンス理論とその株式ポートフォリオ管理問題への応用について学習する。具体的には以下の順序で講義を進める。
  1. 資本資産価格評価モデル(CAPM
  2. 構造化リスクモデル
  3. アクティブポートフォリオ管理の基本原則
  4. 株式価値評価モデル
  5. ポートフォリオ構築
  6. 流動性、マーケットインパク
  7. 投資パフォーマンス分析

<教科書>


Grinold, R. and R. Kahn, Active Portfolio Management, McGraw-Hill.

<参考書>


Jacobs, B. and K. Levy, Equity Management, McGraw-Hill.

竹原 均
筑波大学社会工学類卒業、筑波大学大学院社会工学研究科単位取得退学。 博士(経営工学、筑波大学)、(株)エムティービーインベストメントテクノロジー研究所 (現三菱UFJトラスト投資工学研究所)研究員、 筑波大学社会工学系講師、助教授を経て、2006年早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授に就任、現在に至る。

アセットプライシングモデル、株式価値評価モデルに関する実証分析と、ポートフォリオ最適化、パフォーマンス評価手法の開発を従来は行って来た。 また最近は、会計情報と株価形成の関係について関心を持ち、証券アナリストの予想形成と情報環境に関して研究を進めている。

債券ポートフォリオ分析
債券、金利商品、金利派生証券に関する基礎事項及び実務的応用を講義する。
Bruce Tuckman, Fixed Income Securities: Tools for Today's Markets second ed., John Wiley & Sons Inc. (Wiley Finance), 2002.

中里 大輔(なかざと・だいすけ)

http://www.waseda.jp/rps/webzine/back_number/vol019/vol019.html
ところが、インターネットやウエブの劇的な進展に伴って、工学に求められる課題が大きく様変わりし、私のやってきたような研究は、工学分野の中心ではなくなってしまいました。自分としても10年一区切りで達成感もあり、何か違うテーマに挑戦してみたいと思っていました。ちょうどそんな時期に、ニューヨークのウォール街から、盛んにリクルーターがやってきて、理工系の人材を金融業界にスカウトしはじめていました。
 ウォール街だけではなくて、日本からも日本興業銀行(現在は、みずほフィナンシャルグループ)がわざわざMITまで人材を探しに来ていました。当時、日本の銀行も理工系で博士の学位を持つ者の採用を始めたものの、国内ではなかなか採用できずたいへん苦労していたようです。金融工学の知識はゼロでしたが、自分がこれまでやってきたこと、特に確率過程論の知識がそのまま活かせると聞いて、興銀への入行を決めました。
本当に欲しい理系人材、例えば物理系など応用が利く分野の人が集まるようになったのは、ほんのここ数年、不況の頃からです。金融工学には、幅広いツール、つまり問題を解くための論理とか計算方法が必要です。例えば、宇宙論や量子力学などをやっている人たちは、それぞれにものすごく高度なツールを使っています。こういう人たちに入ってもらうと、それまで何ヵ月もかかってウンウン言っていたような難題が、3日間で解けてしまったりするのです。

新しい金融商品を開発するには、弁護士や会計士と話すのがいちばんいいとよく言われます。ニューヨークで弁護士や会計士と話していると、まだ誰も知らないような業界の最新事情を知ることができます。彼らの間には横のつながりがあって、国際的な情報が猛烈なスピードで行き交っています。こういう人たちからうまく情報収集することも重要な仕事です。そこに理系のメスを入れると、新しい商品ができるのです。

早稲田大学商学学術院教授(ファイナンス研究科)
1980年、早稲田大学理工学部卒業ののち、マサチューセッツ工科大学大学院へ進学。1990年、同・コンピュータサイエンス学科より、博士号(Ph.D.)授与。同年、日本興業銀行入行、ファイナンシャルエンジニアリング部にて金融・為替派生商品評価業務責任者に。1996年よりロンドン支店にてクレジットデリバティブトレーディング用インフラ設計に従事。1999年より興銀第一フィナンシャルテクノロジー(株)金融工学第一部取締役部長兼情報技術開発部長、リスク管理業務部門統括管理に従事。2002年、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株)に社名変更に伴い、戦略技術開発部長兼研究理事として、保険工学への金融工学の応用等、最先端技術の研究開発を担当。2004年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授に就任。東京大学大学院講師、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株)研究理事を併任。著書に『プロフェッショナル金融解析:実務上の難題を解く直感的アプローチ』、『金融技術革命未だ成らず』(大野克人と共著)

ファイナンスのための確率解析入門
Black-Scholes 無裁定評価理論を基礎にHeath-Jarrow-Morton 金利期間構造モデルさらにはハザード過程信用リスクモデルへと従来の金融工学の技に保険数理手法を流入する最新理論の話題までを実務的解決策を中心に講義する。


深谷 竜司 氏 (第一生命保険相互会社企画第一部)
Fukaya, R. and Honda, T. Optimal Bond Portfolio for Investors with Long Time Horizons, Asia-Pacific Financial Markets, 8 (2001),291-320
Fukaya, R., Application of Stochastic Flows to Optimal Portfolio Strategies, PhD thesis, Graduate School of Mathematical Sciences, The University of Tokyo(2004)
Fukaya, R., Application of Stochastic Flows to Optimal Portfolio Strategies, Journal of Mathematical Sciences, the University of Tokyo, 12 (2005),349-397.
深谷竜司, 状態依存効用を有する投資家の最適ポートフォリオ戦略におけるStochastic flowsの応用, 日本保険・年金リスク学会(JARIP)第2回大会発表.(2004.10.2) 論文 ,発表資料
深谷竜司, 多期間最適ポートフォリオ戦略の数値解法 Stochastic flowsとKusuoka schemeの応用, プライベート・コミュニケーションレジュメ, slide.
Fukaya, R., Application of Stochastic Numerical Methods in Multi-period Optimal Portfolio Strategies, 数理解析研究所講究録 1462, RIMS共同研究 確率数値解析に於ける諸問題, Ⅶ,(2006), 100-115. ISSN 1880-2818. 発表資料
深谷-本多,通貨配分戦略における多期間最適化手法の応用,ワーキングペーパー
深谷竜司,MPTフォーラム 平成17年11月10日講演「通貨配分戦略における多期間最適化手法の応用」,発表資料(2005)
Honda, T. and Fukaya, R. An application of multiperiod optimization methods to currency hedging strategies, Bachelier Finance Society 2006, Tokyo. 発表資料(2006)
年金基金や金融機関など機関投資家の立場からグローバルインベストメントプロセスに関する基礎的なトピックを考察する。講義の概略は以下の通りである。
1. 外国為替
2. International CAPM
3. 外国株式
4. 外国債券
5. アセットアロケーション、運用リスク管理、運用評価

実証ファイナンスと金融エコノメトリクス


企業金融

講義題目:コーポレート・ファイナンスの理論的展開
エージェンシー・コスト、情報の非対称性、シグナリング、契約理論などの観点からコーポレート・ファイナンスのトピックスを分析した代表的な論文のサーベイを行う。取り上げるトピックスは、企業の投資政策、資金調達・資本構成政策、分配政策、M&A とリストラクチャリングIPO などを予定している。

新井 富雄
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。ペンシルバニア大学ウォートンスクール修士課程卒業(M.B.A.)。野村総合研究所、野村マネジメントスクールを経て、2004年東京大学大学院経済学研究科教授に就任、現在に至る。
 ゼミ
コーポレート・ファイナンスおよびコーポレート・ガバナンス分野の最近の代表的な研究論文を検討する。

コーポレート・ファイナンスと証券投資の二分野を中心に,その周辺分野も含めて研究を行ってきた。コーポレート・ファイナンスについては,デリバティブ証券化商品などの金融技術および金融新商品が企業の財務政策などに与える影響,コーポレート・ガバナンスなどについて研究を行ってきた。証券投資に関しては,企業価値の評価方法,デリバティブの価格形成,年金基金の運用戦略およびリスク管理,投資信託のパフォーマンスなどについて研究してきた。


山本 功 氏 (SOZO工房)

企業価値・株主価値の視点に基づき、資本の調達・配分・分配を巡る企業財務戦略を受講者と一緒に検討する。企業財務戦略上の課題発見力、企業財務戦略立案のための選択肢構築力などを鍛錬することを目指す。そのために、100 年に一度の深刻な危機と表現される環境下で、日本企業が直面する企業財務戦略上の課題とは何か、とるべき対応策とは何か、などを具体的なケース、現在進行形のケースを可能な限り取り上げていく。受講者の積極的な発言を期待する。

起業投資株式会社 代表取締役


1981年 早稲田大学政治経済学部卒業。
1986年 ハーバード・ビジネス・スクールよりMBA取得。
野村総合研究所、メリルリンチ証券などを経て現職。
2007年9月 株式会社マスチューン取締役に就任。


2009年〜 青山学院大学大学院国際マネジメント学科非常勤講師(資金調達政策)
2008年〜 東京大学大学院経済学研究科・経済学部非常勤講師(企業財務戦略)
2006〜2008年 鹿児島大学稲盛経営技術アカデミー非常勤講師・客員教授(ビジネス経営総論)
2003年 立正大学経営学部講師(金融論)
1994年 日本大学経済学部非常勤講師(国際金融論)

2005年7月 M&Aがやってきた!仕事はどうなる、あなたはどうする?(共著、日本経済新聞社
2004年7月 企業価値向上のためのIR経営戦略(共著、東洋経済新報社
2000年12月 「グループ経営と子会社公開」(証券アナリストジャーナル2000年12月)
2000年7月 入門「戦略財務」経営 日本経済新聞社 大庭清司と共著(第三章執筆)

講義題目:金融機関のリスクマネジメント−デリバティブの実務展開−(みずほフィナンシャルグループ寄付講座)
今や一般の事業会社や公的機関においてもリスクマネジメントツールとして欠かせない存在となったデリバティブについて、実務での活用を中心に金融機関の観点から講義を行う。金融工学の初歩から、商品開発、トレーディング手法、リスク管理まで、網羅的にトピックを採り上げる。
金融機関のリスク管理
みずほフィナンシャルグループ寄付講座)

http://www.fintec.co.jp/recruit/personnel.html

専攻別

専攻別では理系出身者が約8割を占めています。そのうち半分以上が数学・物理系の出身者ですが、工学系では管理工学・設計工学・電気工学や通信工学、その他の理学では地球科学や惑星科学など様々な分野からの出身者がおり、それぞれの持ち味を生かした職場となっています。
文系では経済学部・商学部・法学部出身者などが活躍しています。

参考文献紹介

金融工学入門書

デリバティブズ理論

書名 フィナンシャルエンジニアリング
著者 ジョン・ハル
出版社 金融財政事情研究会
ポートフォリオ理論

書名 証券投資論
著者 証券アナリスト協会編
出版社 日本経済新聞社
金利モデル

書名 期間構造モデルと金利デリバティブ
著者 木島正明
出版社 朝倉書店
信用リスクモデル

書名 信用リスク評価の数理モデル
著者 木島正明、小守林克哉
出版社 朝倉書店
金融リスク管理

書名 Risk Management in Banking
著者 J. Bessis
出版社 Wiley
数理ファイナンス

書名 ファイナンスへの確率解析
著者 D. ラムベルトン 他
出版社 朝倉書店
数理ファイナンス

書名 ファイナンスのための確率過程
著者 森村英典、木島正明
出版社 日科技連出版


池森 俊文(いけもり・としふみ)
1953年生まれ
1977年(昭52)東京大学理学部卒業
1977年日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行
計量システム開発室、金融商品開発部、フィナンシャルエンジニアリング部などを経て
1998年興銀フィナンシャルテクノロジー㈱(現みずほ第一フィナンシャルテクノロジー)取締役金融工学第一部長
1999年日本興業銀行統合リスク管理部副部長
2000年みずほホールディングス統合リスク管理部参事役
2002年みずほ第一フィナンシャルテクノロジー㈱取締役
2003年常務
広島県出身。53歳

2007年1月4日就任
中川徹社長は取締役を退任

三宅 裕司 氏
  (みずほ銀行企業開発チーム)


資産流動化と不動産ファイナンス

経済と金融の理論を用いて不動産投資の問題を解く。主に、「ポートフォリオと不動産」および「不動産ポートフォリオ」に関するトップダウンアプローチに焦点を当てる。実用的なトピックスは、家計ポートフォリオと住宅(ライフタイムファイナンス含む)、機関投資家と不動産エクイティファンド(REIT 含む)、金融機関と不動産担保ローン(MBS,CMBS 含む)、企業不動産(CRE)、REIT のガバナンスとリストラクチャリング、不動産デリバティブス、および不動産サイクルとその同調性。理論的なトピックスは、機会費用と機会価格、ダイナミック・アセットアロケーション、インプライドリスクプレミアムとその横断的特性、リスクと不確実性の違い、投資家行動と投資収益率の予測可能性、非流動性とアセットプライシング、証券化エージェンシー問題

川口 ゆういちろう川口
http://www.cire-research.org/profile.php有一郎 教授 プロフィール
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。
1979年防衛大学校(土木工学)卒業、91年工学博士(東京大学)。96年明海大学不動産学部助教授。英国ケンブリッジ大学土地経済学科客員研究員、99年〜明海大学教授。
2001年東京大学空間情報科学研究センター客員教授。
2001年〜2002年慶應義塾大学メディア研究科特別招聘教授。
2002年〜2003年京都大学経済研究所客員教授。
2004年4月より現職。
日本不動産金融工学学会会長。
著書に『不動産金融工学』(清文社)、『International Real Estate』(Blackwells)、『実践リアルオプション』(ダイヤモンド社)、監訳書に『リアルエステート・ファイナンス第12版(上・下)』『不動産投資ゲーム』『投資の科学』(ともに日経BP社)など。

企業会計
大日方 隆 
講義題目:財務会計の基礎概念
財務会計の基礎概念を解説・検討するとともに、実証研究への入門的指導を行う。
東京大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科で経済学博士号を取得。 横浜国立大学経営学部専任講師および助教授を経て、1998年東京大学大学院経済学研究科助教授、2007年同准教授、2008年同教授に就任、現在に至る。
無形サービスの取引から生じる損益の期間帰属を,キャッシュフローの年度間配分の操作ととらえて,その配分パターンの選択という観点から,会計上の虚構をあきらかにするのが,当面の検討課題である。これまでは,金融商品(債権と貸出金)および企業年金を題材にして,理論と実証の両面から検討している。

醍醐 聰 教授
金融機関の健全経営を促す市場規律のインフラとしての会計基準・会計情報の役割に関する研究。
近年,金融機関が経営の健全性を保ちながら,相応のリスクを負担しつつ与信業務を継続していくために市場規律の役割が重視されている。そこで,この市場規律を有効に機能させていく上で,会計情報およびそれを生産し報告する方法・様式を規制する会計基準にはどのような役割が求められるのかについて研究している。具体的には,税効果会計が自己資本比率規制に果たしている役割を繰延税金資産の会計基準とその運用実態に照らして理論的実証的に検討している。
2. 公共部門の財政規律を促すインフラとしての会計基準・会計情報の役割に関する研究。
近年,公共部門の会計改革をめぐる研究と試行が各国で進められている。その際のキーワードは「発生基準会計」と考えられる。この点で,海外では予算制度改革(複数年予算制度の採用等)等の財政制度改革とのリンケージを意識しながら発生基準会計の活用が検討されている。しかし,わが国では減価償却費や退職給付引当金への繰入を行うことを以って発生基準会計の採用と狭く技術的な側面だけから議論されているきらいがある。
そこで,公共部門における発生基準の採用が財政規律を促すインフラとしての会計情報の質の改善にどのようにつながるのかについて,将来債務の認識と開示に焦点を当てて研究を進めている。
京都大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科で経済学博士号を取得。京都大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同教授を経て、1996年東京大学大学院経済学研究科教授に就任、現在に至る。
ゼミ
複合金融商品を中心とする現代的な金融取引の会計問題について検討する。

会計情報と企業評価
講義題目:現代財務会計の論点
財務会計をめぐる次のような今日的論点を扱う。
  1. 資産の証券化の会計
  2. デリバティブとヘッジの会計
  3. 環境会計(排出量取引と資産除去債務の会計)

会計情報システム
講義題目:会計情報の有用性
会計情報の有用性に関連する実証研究をサーベイする

金融システム論
金融システムの理論分析に関する基礎的な講義を行う。まず導入として、金融契約論や資産価格などに関する基礎的な解説をおこなう。次に、それらの知識を使いながら、(1)銀行と市場の役割、(2)債務不履行、(3)サププライム危機、(4)金融制約のマクロ経済への影響、などのテーマの基本的な解説を行う。


中村 恒

東京大学経済学部経済学科卒業。日本銀行を経て、シカゴ大学大学院経済学博士課程卒業(Ph.D.)。2005年より現職。

動学的金融契約における破産の役割に関する理論分析。
・非対称情報下における連続時間最適契約デザインの理論研究。
・債券価格における流動性プレミアムの分析。

金融のゲーム分析
ゲーム理論と情報の経済学をつかって、金融市場、コーポレートファイナンス、金融政策に関連する基本的なトピックスの解説と輪読。


松島 斉
東京大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科修士課程修了、同博士課程卒業(経済学博士)。筑波大学社会工学系助教授、東京大学経済学部助教授を経て、2002年東京大学大学院経済学研究科教授に就任、現在に至る。

ゲーム理論、特に繰り返しゲーム、誘導可能性問題(Implementation)、メカニズム・デザインの各分野の研究において、高い国際的評価を得ている。

繰り返しゲームにおいて不完全情報下でも協調的均衡が存在すること、および、効率的かつ公正な経済配分を常に一意均衡によって達成できる社会的決定手続きが存在することを、非協力ゲーム理論によって証明した。

現在、実験経済学、オークション・デザイン、フィナンシャル・マーケット・マイクロストラクチャー、行動主義にもとづく誘導可能性問題および金融危機の理論的基礎、などを主要な研究テーマとしている。

証券化と企業金融の経済分析
企業が投資や生産活動のための資金調達をどのように最適に決定するのか、そして証券化とは何かについて、金融契約論の観点から理論分析の基礎を講義する。


吉田 二郎
東京大学工学部都市工学科卒業、マサチューセッツ工科大学修士、カリフォルニア大学バークレーPh.D.ビジネススクール)。日本開発銀行日本政策投資銀行調査役、カリフォルニア大学バークレー校アシスタント・リサーチ・スペシャリストを経て、2007年東京大学大学院経済学研究科助教、2008年2月同講師に就任、現在に至る。その間、日本不動産金融工学学会設立理事、国土審議会専門委員、経済産業省・国土交通省の研究会委員など歴任。

企業が投資や生産活動のための資金調達をどのように最適に決定するのか、そして証券化とは何かについて、金融契約論の観点から理論分析の基礎を講義する。


田中 亘 教授
1996年 3月 東京大学法学部第一類 卒業(法学士)
1996年 4月 東京大学大学院法学政治学研究科 助手
1999年 9月 成蹊大学法学部 専任講師
2002年 4月 成蹊大学法学部 助教授(2007年3月まで)
2002年 9月 米国イェール大学ロースクール客員研究員(04年8月まで)
2007年4月 成蹊大学法学部 准教授(07年9月まで)
2007年9月  東京大学社会科学研究所 准教授(現在に至る)
コーポレートガバナンス

講義題目:金融システムのゲーム理論と情報の経済学
ゲーム理論と情報の経済学によって、金融システムを分析する。また、実験経済学やミクロ経済学一般もあつかう。輪読中心。


マーケットマイクロストラクチャー
芹田 敏夫 
学歴
筑波大学第三学群社会工学類卒業(社会経済計画専攻)
大阪大学大学院経済学研究科前期課程修了(経済学専攻)
大阪大学大学院経済学研究科後期課程退学(経済学専攻)

(長期) 資産市場(株式、債券、外国為替等)の価格形成に関する理論及び実証研究
(短期) 企業の財務行動についての実証分析
(短期) 株式のリスクプレミアムについての実証分析
(短期) 証券市場のマーケット・マイクロストラクチャー

証券市場のマーケット・マイクロストラクチャーについて、基本概念と基礎となる理論モデルを中心に説明を行う。具体的には、在庫モデル、情報トレーダーモデル、limit order market モデルの代表的モデルが中心となる。また、市場構造についての具体的なトピック( 流動性、大口取引、透明性、市場のデザイン)、理論モデルに基づく実証研究、最近注目されているトピックについても扱う。

加納隆
平成 6年 3月  明治大学政治経済学部経済学科卒業
平成 8年 3月  一橋大学大学院経済学研究科修士号取得
平成 14年 10月  カナダ中央銀行研究員
平成  15年 1月  同 上級研究員
平成  15年 11月  ブリティッシュコロンビア大学Ph.D取得
平成 19年 5月  東京大学大学院経済学研究科寄付講座教員(助教)
平成 20年 4月  同 寄付講座特任講師

福田慎一教授
昭和 59年 3月  東京大学経済学部経済学科卒業
平成 元年 8月  イェール大学大学院経済学部博士課程修了
平成 元年 9月  東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程退学
平成 元年 12月  Ph.D.(イェール大学)
平成 8年 4月  東京大学大学院経済学研究科助教授
平成 8年 4月  同 教授
マクロ経済学,国際金融,金融の3つの分野を中心に研究を行った。マクロ経済学の分野では,貨幣経済モデルの動学的な側面に焦点を当て,その経済変動へのインプリケーションを考察した。国際金融の分野では,東アジアの通貨危機を考察し,東アジアの通貨制度や円の国際化の問題を研究した。金融の分野では,日本の金融市場の特徴として中小企業向け貸出の問題を取り上げ,その決定メカニズムを日本のデータを用いて実証的に分析した。
金融
本講義では、金融政策や関連する国内金融に関する最新のトピックスを理論的・実証的両面からレクチャーすることである。福田の講義に関しては、主に、Carl Walsh、Monetary Theory and Policy, 2nd. ed., The MIT Press, 2003 に基づくが、適宜、関連の雑誌論文を取り上げる。また、加納が担当する実証編においては、多変量時系列モデルの一つであるVAR のマクロ・貨幣経済分析へ応用を講義する。具体的には(1)VAR の同定・推定方法、(2)構造的VAR の識別問題とインパルス応答関数および分散分解、(3)線形合理的期待形成仮説の検定、および(4)動学的確率的一般均衡モデルの実証的評価を、プログラミング言語の一つであるMatlab を使い実際のコンピュータープログラミングを含めて概説する。

伊藤 としたか
一橋大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科修士課程を経て、ハーバード大学大学院経済学博士課程卒業(Ph.D.)。ミネソタ大学経済学部助教授、同准教授、一橋大学経済研究所助教授、同教授、東京大学先端科学技術研究センター教授を経て、2004年東京大学公共政策大学院教授に就任、現在に至る。その間、ハーバード大学ケネディー行政大学院客員教授、国際通貨基金IMF)調査局上級審議役、大蔵省副財務官を務める。2004年度日本経済学会会長。2006年10月〜2008年10月、経済財政諮問会議、民間議員を務めた。
金融政策

大学院修士レベルの学生を対象にした本講義では、まず金融政策がどのような経済効果を持つのかその実証的な評価方法とその問題点を概説する。その上で近年発展した確率的動学的モデルに基づき、データにおいて観察される金融政策の経済効果を理論的に考察する。その上で望ましい金融政策に関する議論を俯瞰し、近年の金融政策の実際を紹介する。

予定される講義内容は以下のとおり。
  (1) 学部のマクロ経済学の復習
  (2) 数学と統計学の準備
  (3) 簡単な確率的動学モデルと合理的期待形成
  (4) 金融ショックの経済的効果: 構造的VAR
  (5) フィリップス曲線と貨幣的景気循環
  (6) 名目的な硬直性と実物的な硬直性
  (7) 貨幣需要関数
  (8) ニューケインジアンフィリップス曲線
  (9) 最適金融政策、テーラールール、インフレーション・ターゲッティング
  (10) 金融政策の実際

授業レベルは北米の経済学修士課程のものとほぼ等しい。学部レベルのマクロ経済学ミクロ経済学が履修の前提である。動学的最適化問題、確率的差分方程式、および時系列分析の知識が必要だが、授業中に紹介するので履修の前提ではない。数学等の補講は設けないので注意のこと。

植田 和男
東京大学理学部卒業。マサチューセッツ工科大学博士課程卒業(Ph.D.)。ブリティシュコロンビア大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同教授を経て、2005年同大学院経済学研究科教授に就任、現在に至る。その間、大蔵省財政金融研究所主任研究官、日本銀行政策委員会審議委員を務める。2007年9月まで、東京大学大学院経済学研究科長。

グローバル化の中の金融
金融のグローバリゼーションの実態、影響について、光・影両面から講義する。国際金融論の概観をした後、国際的な金融投資がどのような主体によってなされているか、ヘッジ・ファンド、投資信託、大手金融機関等の行動について解説した後、資産価格・資源配分への影響について議論する。今年度は2007年夏以降の世界的な金融危機の詳しい解説に時間を割くとともに、そのグローバリゼーションの関係についても議論する。

・International Economics, Krugman and Obstfeld, Addison Wesley.
・Financial Markets and Institutions, Mishkin and Eakus, Addison Wesley.
・Global Capital Markets, Obstfeld and Taylor, Cambridge University Press.
・The Subprime Solution, Shiller, Princeton University Press.
ヘッジファンド・テクノロジー、三上・四塚、東洋経済、等。

ゼロ金利周辺での金融政策の効果に関する理論・実証研究:現在、基礎的な分析を進めつつあり、量的緩和策終了後の状況を踏まえて分析を継続する。
・「日本経済の失われた10年」に関する実証研究:これまでに出版の諸研究をまとめつつある状況。

為替政策

大学院修士レベルの学生を対象に、近年発展した国際金融および開放マクロ経済学の基礎理論またその実証分析を紹介する。特にこの講義では、経常収支および実質・名目為替レートの決定モデルを概説し、各理論モデルの実証的妥当性を考察する。

予定される講義内容は以下のとおり。
  (1) 数学と統計学の準備
  (2) 2 期間開放経済モデル
  (3) 経常収支の異時点間モデル
  (4) 経常収支モデルの実証分析
  (5) 開放経済の実物的景気循環モデル
  (6) 国際金融市場における不確実性
  (7) 財の国際間裁定: 実質為替レートモデル
  (8) 国際金融市場における貨幣: 名目為替レートモデル
  (9) 為替レートモデルの実証分析
  (10) その他のトピックス

授業レベルは北米の経済学修士課程のものとほぼ等しい。学部レベルのマクロ経済学ミクロ経済学が履修の前提である。動学的最適化問題、確率的差分方程式、および時系列分析の知識が必要だが、授業中に紹介するので履修の前提ではない。数学等の補講は設けないので注意のこと。

主にObstefld and Rogoff, 1996, Foundations of International Macroeconomics, MIT Press.

金融政策特論
講義題目:金融・財政政策の分析手法
中央銀行や国際機関で使われている実用的な経済・計量経済学的ツールの一部を紹介する。予定される授業内容として、例えばVAR モデルといった計量モデルや比較的シンプルな動学的一般均衡モデルといった理論的なモデルを、既存のソフト(Eviews、Dynare など)で解きながら、実際の国際金融の問題−特に金融・財政政策の効果や途上国のマクロ経済分析−を実証する。詳細は初回の授業で説明する。なお授業は英語で行われる。大学院修士・学部上級レベルが対象。

小枝 淳子
平成 11年 3月  東京大学経済学部経済学科 卒業
平成 14年 9月  東京大学大学院経済学研究科修士課程 退学
平成 17年 6月  カルフォルニア大学ロサンゼルス校経済学大学院 博士課程修了
  (Ph.D. UCLA)
平成 17年 10月  国際通貨基金IMF) エコノミスト
平成 21年 4月  東京大学大学院経済学研究科特任講師(IMF休職中)

マクロ金融 金融システム
中級マクロ経済学が既履修であること。金融政策に関する理論と実証分析(インフレ・ターゲット、テイラー・ルール、ゼロ金利制約と量的緩和)、中央銀行制度・銀行監督のあり方、銀行危機についての実証分析、などが扱われる。

山内英貴
ヘッジファンドに関する実務的、理論的話題を講義する。
1963生まれ。東京大学経済学部卒業、日本興業銀行入行。 金融商品営業部、金融市場営業部、シンガポール支店でおもに デリバテイブズ業務に従事。2000年3月同行退職。 株式会社グローバル・サイバー・インベストメントを設立し、代表取締役に就任。 設立以来、オルタナティブ投資に特化した独立系一任投資顧問会社として、ヘッジファンド運用におけるノウハウを着実に蓄積している。 社是: 『グローバルに評価される資産運用サービスを提供することにより、日本の資産運用と金融業界の再生に貢献する』

金融システムと情報生産
この演習では、金融システムに関連した最近の重要論文を輪読する予定である。

柳川 範之

慶應義塾大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了、同博士課程卒業。経済学博士(東京大学)。慶應義塾大学経済学部専任講師を経て、1996年東京大学大学院経済学研究科助教授、2007年同准教授に就任、現在に至る。