家庭教師でSWOT

Satoshi Nakajimaさん
Life is Beautifulから。

家庭教師の将来について考えてみる

 SWOT analysisという話をしたが、SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(ビジネスを延ばす機会)、Threat(ビジネスをおびやかすもの)の頭文字をとったもの。既にStrengthとWeaknessに関しては書いたので、今日はOpportunityとThreatに関して。


Opportunity

 この業界をとりまく環境で家庭教師にとって最も好ましい現象は、就学時期の子供たちの学習姿勢の変化。漢字はかけない。計算ミスはよくやる。宿題は、なかなかやらない。机の前に座って本を読んだり、勉強する時間よりもパソコンや携帯をいじっているか、ゲームをしている時間の方がはるかに長いという「デジタル・コンテンツ時代世代」が急速に増えていること。

 この手の不連続な変化のことをパラダイム・シフトと呼ぶが、これこそが家庭教師にとって「教育の場の主役交代」を起こす大チャンスである。受験教育業界での現在の主役は希学園、浜学園代々木ゼミナール、川合塾などだが、彼らのビジネスはこのパラダイム・シフト前のライフスタイルに会わせたもの。代々木ゼミナールの基幹教師スタッフがせっかくネットに繋がる教育ツールを作っても、「ネットに繋がるなんてよけいなことを言うとパソコンに弱い保護者の世代の人たちは生徒を、任せなくなる」という販売網と顧客ベースに立脚しているビジネスをしている限り、代々木ゼミナールの教育ツールへの接続率は低迷したままだ。ベネッセのマナビジョン成功すると思えないのも同じ理由だ。

 もう一つのOpportunityはまともな教材が整備されている場所と生徒さんにリーチして、教育をうけさせるチャンネルがばらばらなために世界規模のコンテンツ・ビジネスを展開することが難しくなってしまい成長が止まっている学習塾業界の現状。iknowで英語教育業界に大きな風穴を空ける可能性。iknowのマーケットシェアは英語教育全体で見れば高々1%だが、英語を勉強する人が、よく行くウェブサイト・ランキングという意味で言えば、既に既存英語学習関連ウェブサイトすべてを会わせた数字を上回っているというデータもある(参照←これは米国のケース)。既に「iknowがうけているから英語アプリを作る→面白い英語アプリが沢山あるからiknowを買う」というサイクルが始まっており、少なくとも市場規模でALC英辞朗やNHK英会話と並べるプラットフォームになることは目に見えている。
Threats
 Threatsの一つ目は通信教育。ベネッセのビジネスが着実に伸びている理由の一つは進研ゼミの成功によるブランド・イメージによるものだが、注目すべきは「主に通信添削で受験勉強をするんだから、家庭教師なんて不要」というユーザーが増えているからこそ、ベネッセへの乗り換えがスムーズに行われている点。そんなユーザーにとっては、「コストのかかる家庭教師よりはクールで安い進研ゼミ」はコストパフォーマンスをちゃんと考慮しても魅力的だ。そこに穴馬的な存在で表れたのが、と呼ばれる$200-$300の超小型で低価格の公文式。分量も問題のレベルも高くないが「主に添削通信教育をするんだから、家庭教師なんて不要」というユーザーの一部がこちらに流れる可能性もあるし、それが間接的に家庭教師や、ベネッセの値段に圧力をかける可能性は十分にある。
 もうひとつのThreatsは公立学校。実技4科目だけでなく受験勉強にも手を伸ばすことが考慮されているようだが、「教育環境の提供や教育内容の提供では儲けなくて良い」というビジネスモデルの文部科学省がサービスを提供しはじめた、というのは少しやっかいだ。公立学校の存在は、ただでさえ低価格化が進んでいる学習塾や家庭教師の値段にさらに下降圧力をかけることになるので、その値段競争にまきこまれないようにうまく立ち回って今の粗利益率を保つことが家庭教師にとってはとても大切だ。
次の一手は?
 ではこのSWOT Analysisの結果、私がたどりついた「家庭教師が打つべき次の一手」はなんだろうか。せっかくなので、「宿題」としてこのエントリーではまだ書かないで置こうと思う。ぜひともコメント欄なりトラックバックなりでの活発な議論をしていただきたい。