時効の制度趣旨

On Off and Beyond: ドイツはいまだに第二次世界大戦の戦争犯罪裁判をしているという驚き

タイトル以上の中身は全然ないのだが、びっくりしたので。
New York Timesの”In Germany, Whispers of ‘Enough’ at a War-Crimes Trial"
実際に記者の人が傍聴したドイツでの裁判の記事だが、被告は90歳のドイツ人。イタリアで民間人を14人殺した罪に問われており、証人はイタリアからビデオ電話で通訳付きで参加、というもの。
ナチスという特異なものがあったとはいえ、戦争が終わって60年以上も戦争犯罪を裁判し続けるとは・・・・ドイツ人ってすごい。(でも、ドイツ人は、日本が、自国民が住んでいない北方領土返還を求め続けているのを聞いてすごいと思う、というのを聞いたことがあるので、いい勝負かもしれないが。)

ナチスの一員としてやった所業については、どれだけ時がたったとしても、国家は、刑罰をもってのぞまないといけないという考え方か。ある意味こわいかもしれない。
長い時間の経過の中で、証拠が散逸して、合理的な刑事裁判ができなくなるからという理由も、このケースでは適用されないと。
イタリア人に、現地で話しをさせたら、証拠調べはできるやんけと。
そして、ナチスの関係者には、個人の地位の安定というメリットは、与える必要がないと。
長い事実状態は、正義の実現を妨げるものではないと。

現行法の時効停止では、殺人事件から20年が経過後に公訴棄却、管轄違の判決を受けて、そのまま再び起訴されずに5年が経過すれば、公訴時効は完成する。時効が完成すれば、たとえ公訴提起されても、免訴判決(刑事訴訟法第337条4号)がなされることになる。しかし、中断制度では、公訴提起後による中断もあらためて、時効が進行するため、特別な中断手続をとらなくても、公判中に時効が完成することも理論上はあった。だから、時効停止制度は裁判所にとっての利益が大きいとの指摘もある。

公訴時効制度については、いずれの法律にもその解説及び解釈は盛り込まれていない。このため公訴時効制度が設けられている理由は、いずれも通説の域を出ていない。通説という形ではあるが、理由には以下の説がある。
(1)実体法説
時を経るにつれ犯罪の社会的影響がなくなっていき、国家の刑罰権が消滅する(刑罰を加える必要性が低下する)ため。しかし、それなら、無罪判決を言い渡さずになぜ免訴判決になるのかという批判があり、免訴判決に対しての学説上争いにも決着はつけられていない。
(2)訴訟法説
時の経過とともに証拠物が散逸し、また処分されることで事実認定が困難になるため、適正な審理が困難になる可能性があるため。しかし、それなら証拠が十分ある場合はどう説明するのかという批判がある。DNA鑑定技術が飛躍的に向上したことにより、証拠の長期保全が可能になったこともこの説への説得力をなくさせている。
(3)競合説
(1)実定法説と(2)訴訟法説の両方の理由が考えられるため。
(4)新訴訟法説
犯人と思われている者が一定期間訴追されないことで、その状態を尊重し、個人の地位の安定を図る制度。これが最近の通説だと思われる。