【 医学部の定員増にどんな意味があるのか?/ 和田秀樹 】より

医者不足対策として、大学の医学部の定員を700人増やすそうだ。

そうでっか。そうでっか。

一つは、大学の医学部の定員を増やしたところで、肝心の大学の教授たち
が、臨床とか地域医療をやる医師を見下していて、研究医のほうがえらいと
考えているのだから、結局、学生が大学の医学部を出たところで、地域医療
をやる気にならないということがあるだろう。

こういう組織文化も実務を経験すると、とてもよくわかる。
法学部の世界とちょうど、鏡のように逆なのではないかな。
優秀な人間は、司法試験に合格して実務にいき、
いまいっぽの人が、大学教授やっているという不思議。

研究医が教育をする大学病院でなく、臨床医が教育する、つまり実務家が
教育するメディカル・スクールをつくらないと解決にはならないだろう。そ
のメディカル・スクールが、臨床のできる、つまり手術ができる、地域医療
ができる、腕がいい医者ばかりを教授にして、しかも大学とは違う、一線の
医療のできる付属病院をつくれば、そこで研修を受けたがる人間は増えるは
ずだ。

医学部と法学部の問題意識は、似ている。

医学部の教育の責任者、つまり教授の地位は、少なくとも臨床の教授は地
域医療の経験のない人間には与えないというようにするだけで、地域医療を
見下すような人間が教授にならないですむ。そして、医学部で出世したい人
間は、地域医療を喜んでやるようになる。

医者でもなんでもないけど。ここまでくると、反論もありそうな話。
医学に貢献するために研究することで、
臨床の経験をつむことはやっぱり違うでしょうに。

「現場主義」は大変結構かもしれないけど。
根性のある人間だけ、持ち上げるカルチャーというのはどうしても好きになれない。

地域枠で入った人間が、指定病院以外の病院にいくのを禁じることもでき
ないし、奨学金をもらっても返せば自由になれるのなら、研修が終わってす
ぐに、美容外科に勤務して、さっさと借金を返す人間だって出てくる。

美容外科はそんなにもうかるのですね。

私がある番組でご一緒した産婦人科医は、医者不足のせいで年に600件も
お産を受け持つという。仕事は大変だが、年売り上げは2億を超えることに
なるのだそうだ。

私があった産婦人科のお医者さんも豪華な家に住んでましたよ。