2008-02-23 - アンカテ

足元をみた生き方をしている。
地に足がついている。
現実的な見方をしている。

こういう評価をもらう考え方や、見方に共通しているものを、
かなり、本質的に抉り出しているように思う。
とても、頭がクリアになった。

そこで、どこに根本的な対立点があるのか自分なりにいろいろ考えてみて、ひとつ思いついたことがある。

それは、私が世間一般で通用している「これがリアルだ」という合意について、疑いを持っていることだ。

一般的に、次のパラダイムに合致したことが「リアル」とされているのではないかと思う。

戦争=世の中の資源は不足しており、人間は限られた資源を奪いあって生きていくしかない
製造業=資源を一箇所に集め、それを隔離することで価値が生まれる
官僚制=価値を生む為には、指揮命令系統のある組織の中で、何らかの「機能」を果たす存在として貢献する必要がある

世界の原則はこのパラダイムであって、「助けあい」とか「自由、平等、博愛」とかこのパラダイムに反したものは、特定の領域の中で一時的にしか成立しない(だからこそ人為的に努力して守る必要がある)、という考え方だ。

ネットの中では、明らかにこのパラダイムに反したことが起きているのだが、それを「戦争」「製造業」「官僚制」の言葉で語らない限り、それが「リアル」だとは見なされない。仮に、ネットの中で一時的に別の現象が起きているとしても、それはネットが世間一般から隔離されている一時的な段階だけのことで、もし、これからもネットの影響力が拡大していくならば、ネットもやがて「戦争」「製造業」「官僚制」の原則が支配する世界に変質していくはずだ、という見方だ。

例えば、「夢を追ってばかりでは食べてはいけない」
という見方があるとする。
これは、1と3のパラダイムにバッチリはまっているように思える。
「学歴」「受験」がなぜ、保護者を熱心にさせるかという理由もこれで
かなり、整理がつく。受験は、「戦争」と「官僚制」「製造業」すべてに
関連する。

世の中の資源は不足してない、分配が滞っているだけだ
価値はネットワークから生まれるので、なるべく多くの資源を共有すべき
自分が何で社会に貢献すべきかは自分が決めるべき(自分以外には最適な答が出せない)

という世界に移行しつつあるので、むしろなるべく早くこれに適応するべきだと考える。というか、本当は両者をともに相対化して、うまく使い分けるのがベストだと思うが、まずは今通用している「リアル」という考え方を壊すのが第一優先だと考えている。

これを「パラダイム」と呼ぶのは、どちらの考え方でも、その原則に従って世界を見れば、その原則が成立しているように見えてくるからだ。そして、その原則を共有してない人には、その世界が「リアル」には見えてこないからだ。見えたとしても絶対にそれを「リアル」とは呼びたくないだろう。


戦争⇔共存
製造業(独占)⇔共有による効率アップ
官僚制⇔個人の創意工夫の重視

この対立軸が、色々なところにあると自覚できるかどうかは、とても
大事なことだと思う。
おそらく、みな、無意識にこの軸のどこかにはまっている。

このエントリーを念頭において、かの梅田大明神のエントリーを拝読すると、
非常に興味深い。

My Life Between Silicon Valley and Japan

http://svjen.org/entry.php?entry_id=152:梅田様のインタビュー

以下、抜粋です。
戦争と官僚制というパラダイムから見ると?

Q:日本の若い世代にとって、将来の指針となるロールモデルを示すということですか?

A:
ロールモデルの提案も含まれますが、それだけではないです。たとえばJTPAのシリコンバレーツアーには、ものすごい優秀な人が参加してくるけれど、みんな将来に対してあまり希望を持てていなくて、漠然とした閉塞感を抱いている感があります。自分がやりたいことを貫いてやればいいとか言うと、「そんな事初めて言われました!」って返ってくる。皆、大学に入る前はとにかく良い大学入りなさいって周りの大人から言われて受験勉強して、大学入るとまた周囲から良い会社に入りなさい、と言われて3年生くらいから就職活動して。日本の若い人たちには、与えられた暗黙の人生のアジェンダみたいなものが存在するんですよね。だから社会に出るまでに、多様な価値観に触れている人が少ない。でもみんな頭の良い人たちだから、大手企業に入社して定年までずーっと働いていて、何か面白い人生が広がるんだろうか?って疑問に思ってくる。そこでも周りの大人は、他のオプションもあるんだとは言ってくれないんですよね。

Q:でも、アメリカは違うと?

官僚制をめぐるパラダイムについて

A:
アメリカは、レールのある人生設計というのは崩壊していると思います。転職を繰り返して、自分の向き不向きを見極めて、必要であればまた学校に行く。日本よりも厳しい世界だけど、何をしなければいけないかを皆自分で考えなければいけない、ということはわかっていますよね。たとえばエンジニア出身で、技術だけでやっていけないと思えば、30歳くらいでビジネススクールにいくとか。それを支える社会全体のオプションも、ロールモデルもいっぱいありますよ。

ここのやりとりでは、「官僚制」「戦争」の関係が面白いように思う。
「はてな」は営利企業だから、当然、サイバーエージェントや、Gree,Mixiといった
企業と、アクセス数などでは、競合関係にあると思う。
そこでは、「戦争」が存在していると仮定する。
「戦争」を、戦い抜くためには、勝利のために一番有効な手を一歩一歩打っていく
必要がある。
そういう手をうっていくと、
「本名も知らない人だけど、仕事が出来るから、採用しちゃえ!」
という、「合理主義」にいきつく。
人間のあらゆる属性から、「仕事の能力」だけを取り出して、
「はてな」という会社組織が、成長していく・・・。

Q:日本の現状がこのまま続くようであれば、若い世代が開かれたキャリアパスを持つのは難しいと思われますか?

A:
大組織の頑固な性質はなかなか変わらないと思います。もちろんそれによって上手くいっている部分もあるので、全てを否定するわけではありません。ただ、若い人たちの閉塞感を打ち破るような、そんな日本社会、日本企業を変える動きを、大組織の中から実行するのは困難だと思います。だから、大企業の外でイノベーションが起こるようにしなければならないと考えています。今ネットベンチャー企業「はてな」の取締役をやっているのですが、東京での人事採用面接の内容を音声で聞いていると、採用応募者を皆ハンドルネームで話しているんですよね。で、そのハンドルネームの応募者がとても技術的に優れていて、こいつは良いって言って採用を決めるんです。それで採用を決めた後、「ところでこの応募者、本当はなんていう名前なの?」なんて言ってるんですよ!(笑)どこの大学を出ているとかはおろか、本当の名前すら知らない。でも、この姿こそが本来の「人を評価する姿」であって、こういう積み重ねがイノベーションに繋がるんじゃないかな、と思うんです。完全に大企業組織のカウンター・ディスコース(対抗言説)ですよね。イノベーションを日本の大企業社会の外で作っていくというのは、そういうことではないでしょうか。